A イノベーションロジック
その3 どうやってILの種をみつけるか
2) 問題分析
前回までで,問題分析を行うべき予兆までを解説した。今回は,問題分析によるIL創出の最終回として,問題分析結果からのIL創出を解説する。
(5)問題分析によるIL創出
問題分析からのIL創出には次の二つのやり方がある。一つは重点問題をひっくり返すもの,もう一つは目的を再確認して解決レベルを定め,そこから方策を考案するものだ。
①重点問題のひっくり返しによるIL創出
問題分析結果からIL創出を行う上で,分かりやすいのは重点問題をそのままひっくり返してILにするというものだ。連載第12回 で重点問題から創造したILを例示した。重点問題が,ILを整理する4象限のうち上2象限(現状どのようにしているか,それによるロスは何か)を表現しているので,そのひっくり返しで下2象限(これをどのように変えるか,それによるリターンは何か)を創造すればよい。
②目的を再確認して解決レベルを定めそこからのIL創出
目的を再確認して解決レベルを定めそこからのIL創出は,次の手順で行う。
a)重点問題を解決することを「目的」と捉え,その目的を達することのさらに上位の目的について,横方向と縦方向への展開を行う。
果ては「世界平和のため」のような目的まで展開できる。そこまでの展開は必要ないが,十分荒唐無稽な水準までの展開を行う.
b)多様なレベルの目的の中で,プロジェクトが意思決定者から承認を得ることで遂行できる,最も高いレベルの目的を主要目的として,一つ又はいくつか選択する
c)選択した主要目的の達成された状態の定義(目標設定)を行う。目標設定では,目的の達成を知ることのできる「指標」,その指標の「現在値」と「目標値」,達成を約束する「実現時期」を決める。
d)目標設定された主要目的を,達成するための手段を検討する。手段は,目的をブレイクダウンしながらツリー構造に展開する。ILにふさわしい手段は,ツリー構造の2階層目又は3階層目であることが多い。
目的展開と手段検討は,突拍子もないものも含めて,頭を柔らかくして,数多くの目的と手段を出すことが,よい主要目的,よいILへの近道だ。ILは実現性と効果の観点で選択する。例えば,建材メーカの見積り業務において,目的を再確認して主要目的を定めた例を次に示す。
問題分析によるIL創出は本稿で終わりにする。
次回からは,先行事例調査によるIL創出の解説を始める。
つづく
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