A イノベーションロジック
その3 どうやってILの種をみつけるか
2) 問題分析
前回は,問題分析を進める技術のうち,キーパーソンを見つける,捨て置けない悪影響がある問題かを評価する,を解説した。
今回は問題の事実を聞き出す,論理の飛躍を正すと単一の問題にする,を解説する。
(3)どんな技で問題分析を進めるか
C)問題の事実を聞き出す
問題を挙げてもらうと,「積載効率が下がる」や「納期遅延が発生する」のように,ビジネス上のロスを表現するものも出てくるが,このような問題については事実情報を確認する。
「〇〇事業部では,積載率は大型車80%,中型車60%,小型車40%になっている」や「〇〇事業部では,都内で月に1.28回の納期遅延」のような情報を引き出す。
この場合,いずれも捨て置けない悪影響だという共通認識があり,この問題から原因方向にさかのぼって分析を進める。問題の事実を聞き出すことは,フォーカスすべき問題かの判断以上に重要なことがある。この事実から提起された問題以外の問題も考えられるからだ。
問題として表現されるものは論理又は論理の一部であり,これは事実を意味解釈したものだ。
問題提起した人は,積載率について,特に小型車の積載率はもっと高く在るべきだという認識があり,それに対して事実が40%なので,「積載効率が下がる」と考えたのだ。
これに対して提起された問題以外の問題として,「小型車に配車された荷物は混載できていない」という仮説が想定できる。この仮説を提示すれば,仮説が本当か否かを明らかにする別の事実は確認可能だ。この問題から明らかになった原因は,次のものだ。
・営業部門は着日着予定を指定する方が確実に納入できると考えている。
・多くの営業マンは,自分の顧客に利便を図りたいと考え,朝一に納入できれば貢献できると
考え,朝9時納入を指定する。
・朝一納入が多くなり,混載ができず,近隣の納入先でも個別に車両を手配せざるを
得なくなる。
・積載重量当たりの単価の高い小型車の比率が高くなり,かつ小型車ほど積載率が下がる。
・手配すべき車両が増え,手配ができないと納期遅延になる。
D)論理の飛躍を正すと単一の問題にする
問題を挙げてもらうと,しばしば論理の飛躍に出くわす。その場合,飛躍を埋める問題の洗い出しをかける。
例えば「人材のローテーションができていないので人が育たない」という問題が挙がった場合,「人材のローテーションができていない」ことによって「人が育たない」悪影響が生まれるのには,「いろいろな仕事の経験ができない」ことで「前後の仕事の経験からどうやればよいか多面的な視点が得られない」因果関係が考えられる。
また,「人材のローテーションができていない」ことによって,「マンネリが生じて向上心が薄れる」因果関係も考えられる。
ここで重要なのは,「人が育たない」悪影響も大きな問題ではあるが,「多面的な視点を得られない」こと,「マンネリが生じて向上心が薄れる」ことによる悪影響は他にも考えられる。
また,「多面的な視点を得られない」ことの原因には「人材のローテーションができていない」以外が,「マンネリが生じて向上心が薄れる」ことの原因にも「人材のローテーションができていない」以外が考えられる。論理の飛躍や複合的な問題を切り崩すことで,広く参加者に触発を与えて問題分析の深度を深めることができる。
次回は,「他にないか」と「何が一番」,最終的に問題構造を文書化する,を解説する。
つづく
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大上 建 (Takeru Daijo)
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