もはや現実となったSFの話


最近、久しぶりに星新一の小説を読んだ。
『盗賊会社』――星新一の代名詞である、ショートショートが36編収録されている――である。
星新一のショートショート集は、全編通してある一つのテーマがあるものだが、件の『盗賊会社』は管理社会がテーマになっている。


読んだ中でも特に言い知れぬ気持ちを抱いたのが、「無料の電話機」であった。
料金が無料になる代わりに通話の途中でCMが入る電話機にまつわる話なのだが、
これがなんとも笑えないのだ。
エヌ氏と友人の会話中、一人が話す毎に、その内容に合わせた宣伝が流れてくる。
至極真っ当で重要な話をしている最中に都度広告が流れ、その度に話が中断される。


『盗賊会社』を最後に読んだのはかれこれ10年以上前のことで、私個人としてはパソコンも携帯電話も持っていなった時である。
当時はシュールな笑い話として読めたのだが、久しぶり読むと、まったく笑えなかった。
なんせ、身に覚えがありすぎるのだ。
今、WEBサイトやSNS、動画サイト、ゲームなど、様々なサービスを利用する度に、過剰に思えるほどの広告を目に耳にする。
基本的に無料でサービスを享受できる代わりに、広告の波にのまれ、集中力が削がれる。
過剰な広告があるサービスは、使う気力もなくなる時さえある。
無料サービスの広告を減らせる有料オプションなんていうのも出てきた始末である。

無料が蔓延した結果として有料に立ち返りつつある私にとって、「無料の電話機」は余りに利きすぎたブラックジョークだった。 


この広告まみれな現状をまるで予言したようなこの作品、初出が1968年と、実に50年以上も前なのだから、尚のこと面白いものである。

  お問い合わせ  - お気軽にお問い合わせください - 

  • 株式会社 パブリックリレーションズ
  • 〒064-0807
  • 北海道札幌市中央区南7条西1丁目13番地 弘安ビル5階
メールでのお問い合わせはこちら

  • この記事をシェアする