イノベーションを起こそう!(連載第9回)


A イノベーションロジック

 その3 どうやってILの種をみつけるか

 

 1) 成功分析:組織内の成功を基にILを創出する(つづき)


 

8回で,有能者のノウハウを表す短い言葉の正体がコンセプトであること,コンセプトとは方法論の構造における狙いに寄与する根本的な考えのことを解説した。今回は,有能者からノウハウを抉り出す技術であるバリュリスニングについて解説する。

 

(6)   ノウハウを抉り出す技術(バリュリスニング)がある

■ 有能者も自分のノウハウを説明できる訳ではない

 秀でた成果を継続して上げている有能者がいれば,必ずノウハウをもっていると考えてよい。これを組織的に拡充しようとした場合,まず,いかにノウハウを抉り出すかが課題となる。

 ところが有能者に対して,ストレートに「あなたのノウハウを教えてください」と問うてもほとんどの場合,自分のノウハウをまともに説明できない。我々は数多くのノウハウ調査を行ってきたが,自身のノウハウを見事に説明できた人は1例だけだ。「仕事のできる人」が,そのまま「なぜ自分は仕事ができるのか説明できる人」ではないということだ。つまり仕事ができる能力と,能力を説明する能力は別物なのだ。

 

■ ノウハウを抉り出した事例

 我々の調査対象の,ある有能PMは,「あなたが常日頃気にかけて大事にしていることを教えてください」という問いかけに,少し考えた後に「ガス抜きが大事」と言った。「ガス抜きが大事」と言われても,どのようなノウハウかまったく分からないので,「ガス抜きが大事」に最近実践した具体的な事象を聞いたところ,週に一度協力会社のリーダを連れて職場を抜け出し,喫茶店で話をしていると言う。どのような話をしているか続けて聞いたところ,次の会話であった。

 

 

 このインタビュで抉り出すことのできたこの有能PMのノウハウは,「ひざ詰めで相互に問題を共有し,表面化する前につぶす」というものだった。

 

■ なぜ有能者が自分のノウハウを説明できないか

 有能者は,高い向上心をもって日々より良いやり方を模索する。その中で着想を得ると,その思いついたやり方にまず名前を付けて,それを思い出しながら繰り返し改善してノウハウを成熟させていく。

 しかし,最初につける名前は,本人にとってフラグに過ぎない。本人はフラグがどうであってもうまくやれればいいのだから。だから完成形となったノウハウからすると,最初につけた記号は,まるで誤った名前になっている。

 この有能PMは「ガス抜きが大事」と言った。週に一度協力会社リーダを連れて職場を抜け出し,喫茶店で話をしていた。ことの始まりは,相手の協力会社リーダが煮詰まっていて,ガスを抜いてやらないと…という動機だったそうだ。しかし繰り返す中で,このひざ詰めの場でやるべきことが確立していったのだ。

 

■ バリュリスニングという技術

 ノウハウは無意識領域にあるが,それは一筋縄では出てこない。そこで徹底してノウハウを実践したファクトを聞き出して,これを意味解釈してロジック形成する必要がある。誤った名前(フラグ)をいくら論理展開しようとしても空回りする。

 とっかかりはやはりフラグだ。フラグしか意識領域にないからだが,有能者本人にとっては,フラグにつながって実践のファクトがあるので,フラグから実践のファクトを引きずり出す。次のような質問を投げかける。

 

 

 

 誤った名前(フラグ)につながる,ノウハウ実践の具体的事例を聞き出し,これを意味解釈することで,ノウハウの仮説を構築する。そしてその仮説を有能者に確認し,ノウハウを確定するのだ。

 

 

次回は,成功分析によるIL創出のまとめを解説する。

 

つづく

 

株式会社データ総研
コンサルティンググループ
シニアコンサルタントマネージャ
大上 建 (Takeru Daijo)

 

 


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