イノベーションを起こそう!(連載第7回)


A イノベーションロジック

 その3 どうやってILの種をみつけるか

 

 1) 成功分析:組織内の成功を基にILを創出する(つづき)


 

4回で,個人差が存在するような業務では,有能者は秀でた成果を上げるノウハウをもっており,有能者に共通して大切にしている短い言葉があり,その短い言葉はノウハウを表すラベルであることを解説した。有能者が大切にしている短い言葉の例として次を挙げた。

   ✓ 営業職 「11回行く」           :前々回解説済み
   ✓ 営業職 「顧客接点営業を育てる」    :前回解説済み
   ✓ 開発設計職 「理論と実践を融合させる」 :前回解説済み
   ✓ 開発設計職 「前提を疑う」       :今回解説

 

(4)「前提を疑う」を大切にしていた開発設計職の成功を基にしたILの創出


 ■ 成功のファクト
 この言葉を大切にしていたのは,機械メーカの若手開発者だ。このメーカでは,競合メーカに先行して,付加価値を高めるメカニズムを搭載した製品を発売していた。この新機能によって,競争から一歩抜けることができ,製品価格を押し上げることができた。しかし,このメーカの悩みは,そのメカニズムが高コストなものであったことだ。いずれ競合メーカも追随してくることは必至なので,それまでにコストダウンを成し遂げないと,せっかく高めることができた利益率が低下してしまう。この若手開発者は,「前提を疑う」というノウハウによって,このメカニズムのコスト半減を達成した。

 この第1世代のメカニズムは,他分野の機構を模倣して小型化し,製品に組み入れ,それを電子的に制御することで付加価値を高めたものだった。第1世代は,機能の達成が精いっぱいで,純粋な模倣に止まったので,オリジナルの精密な動作と加工精度も同水準に維持し,それ故に高コストになっていた。

 コストダウン設計と呼ばれる,次世代のメカニズムの設計を担当する場合のテッパンの手法は,金属を樹脂に代替すること,既存部品の共用を検討することの二つだ。一般の技術者はこの二つの手法を場当たり的に試みて,試作での確認を繰り返す。だが,このようなアプローチでは,成果は運に左右され,本当のコストダウン余地を刈り取ることはできない。

 これに対して,この若手開発者は,第1世代のメカニズムが,他分野の機構を模倣することで,暗黙に決まった前提を疑って,理想的なメカニズムから,どれだけ後退させて現実のメカニズムにすべきかを考えた。模倣した他分野の製品は,その使用される環境及びインプットをコントロールできないという理由で,精密な動作と高い加工精度を必要としていた。しかし当社の製品では,製品と対象物の距離が異なること,インプットをコントロールできることから,オリジナルと同水準の動作と加工の精度は必要ないと考えた。そこで,このメカニズムの動作原理を明らかにし,動作原理を実現する理想のメカニズムを想定し,当社の製品の用いられる環境から制約条件を求め,実装すべき設計を求め,達成すべき動作の精密度と加工精度を再定義した結果,ギヤやリンクの点数削減,材質変更と成型方法の変更を行って,コストを半減させた。

 

■ 成功のファクトを意味解釈して創出したIL
  上記の成功のファクトを意味解釈した,成功この有能者のノウハウのロジックは次のようになる。

 

図1 「前提を疑う」ノウハウのロジック

 

 上記のロジックは,有能者のノウハウを表しているが,組織的にイノベーションを起こすためのILにはなっていない。そこで組織が実施するILは次のようになる。

 

図2 ノウハウから展開した組織が実施する

 

 次回は、ノウハウを表す短い言葉の正体を解説する。

 

つづく

 

株式会社データ総研
コンサルティンググループ
シニアコンサルタントマネージャ
大上 建 (Takeru Daijo)

 

 


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