イノベーションを起こそう!(連載第4回)


A イノベーションロジック

 その3 どうやってILの種をみつけるか

 1) 成功分析:組織内の成功を基にILを創出する

 

 前回は,ILの種を見つける対象の畑に,A~Cの領域があることを解説した。A領域は組織内の未共有の成功,B領域は組織内の捨て置けない問題,C領域は競争相手又は先行異業種の成功だ。今回から,A領域のILの種を発掘し,ILを創出する成功分析について説明していく。
 営業職や研究開発職は,多くの人が同じ機能を担っているが,成果には個人差がある。正規分布の右端に位置する,高い成果を上げる有能者は,秀でた成果を上げるノウハウをもっている。有能者に共通しているのは,大切にしている短い言葉があることだ。例えば次のような言葉だ。
   ✓ 営業職 「11回行く」
   ✓ 営業職 「顧客接点営業を育てる」
   ✓ 開発設計職 「理論と実践を融合させる」
   ✓ 開発設計職 「前提を疑う」
 これら大切にしている短い言葉は,有能者本人にとってのノウハウを表すラベルだ。このノウハウは,組織的に認知・共有されていない。これは企業にとって大きな損失だ。
 ノウハウを表す短い言葉の正体は,方法論におけるコンセプトだ。これから4回に分けてこの短い言葉のノウハウを順に解説し,ノウハウを標準化する技術である方法論,ノウハウを抉り出す技術を解説する。

 

 (1) 「11回行く」を大切にしていた営業職の成功を基にしたILの創出

■ 成功のファクト
 この言葉を大切にしていたのは,生命保険会社の女性営業だ。まだ各社の商品に差のない時代のことだが,指折りの成績を上げていた。
 商品である保険は,息子が独立し就職するというような人生の転機に売れる。そこで継続的に会ってもらえて頼りにされ,その人の人生の転機に,保険のことを思ったとき,最初に思い出してもらえる存在になればよい。そのようなお客さまが基盤顧客だ。大切にしている言葉の11回は,この有能者の経験則だ。月に1回の訪問を継続し,11回会うことができれば,以降何度会いに行っても断られることはないそうだ。
 ただし,有望なお客さまほど忙しい方だ。会う価値のない訪問では,11回どころか数回しか会うことができない。そこで相手の特性を知り,話を聞き,役立つ情報をもっていくことを励行する。例えばバブル期に高い絵を買って困っている歯科医に,その画家の絵の扱いのうまい画廊を紹介するなどだ。だから仕入れた話を懸命に手帳に書き込み,基盤顧客のカルテを充実させ,訪問の合間に必要な調査を行って,悩みと解のマッチングを考え続ける。そして先月までに成約に至らなかったお客様を方面別に名寄せして,訪問計画を立てて訪問を続ける
 それに対して一般の営業は,会社から与えられた標準的なプロセスを硬直的に展開し,数回の訪問でクロージングと呼ぶ契約の切り出しを行い,それは押売りなので当然断られ,継続して会うことができなくなることを繰り返す。

■ 成功のファクトを意味解釈して創出したIL
 上記の成功のファクトを意味解釈した成功のロジックは次のようになる。

 

図1 「11回行く」から創出したIL

 

 次回は「顧客接点営業を育てる」を大切にしていた営業職の成功を基にしたILの創出を解説する。

つづく

 

株式会社データ総研
コンサルティンググループ
シニアコンサルタントマネージャ
大上 建 (Takeru Daijo)


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